雨に打たれて。

今日、偶然、あの人に帰り道に出会った。
「会えなかったけど、それは良かったのかもしれない」と思った。
そんな時だったから、正直、何かしら、誰かしらの意地悪さを感じた。




雨の中、私は面倒で傘を差さないで、
雨の日独特の明るい空を目を細めながら歩いていて。
そんな時に同じように傘を差さないあの人が目の前を歩いてきた。


きっと気付いたのは私が先だったと思う。
その後にあの人は小さく手を振って、必然的に近付く形になった。
私は雨を打たれながら歩くあの人に、きっと見とれていたのかもしれない。
少々、歩きが鈍かった。そんな気がする。
「よぉ」と一言だけ、私はあの人に言った。


あの人も「よぉ」と返して、どうして居るのか?と尋ねてきた。
色々と理由があったので「色々とね」と答えた。
「ま、あんま興味は無かった」と今日一番、冷たい一言だったか。
目的地は私が今まで居た場所だと簡単に予想できたので、
私は逆戻りして、あの人の隣を歩くことにした。


色々と馬鹿なことを言い合って笑いながら、雨の中、五分程度歩いた。
けれど、覚えているのはとても静かな散歩。そんな雰囲気だった。
あの人にすれば「つまらない」のだろうけど、私はとても好きだ。


二人きりで居るときのあの人はいつも穏やかだ。
良いのか、悪いのか。それは私では判らない。
ただ私に言い切れるのはそんなあの人も素敵だと言うことだけ。